一人親方が現場に入れない!? 本当にあった建設現場入場制限の話

建設現場での「入場制限」、一人親方なら一度は耳にしたことがあるはず。
「予定していた現場に入れない!なんで?」なんてことのないように、入場制限の動向をチェックして現場に備えましょう。
1.厳しくなる入場制限
「入場制限」の理由、それは建設作業員の社会保険の未加入問題です。
その対策として、国土交通省により「社会保険加入に関する下請指導ガイドライン」が作られました。
段階的な改訂が進み、入場制限の条件はますます厳しくなっています。平成29年度以降では、社会保険未加入の作業員は現場入場を認めない取扱いを求めています。
これはつまり、「適切な保険に加入していないと仕事ができない」ということ。
一人親方にとって、入場制限は死活問題と言えそうです。
2.現場の声
「労災保険番号がないと、現場に入れない、先に番号だけ知りたい」
「やっと仕事が入ったけど、保険に加入していないと、現場に入れない。急ぎで加入したい」
「元請に早く労災保険番号を提出しないといけない。じゃないと仕事を失ってしまう」
などなど、当団体の加入者様からも現場でのリアルな声をいただいております。
やはり、保険に未加入だと、現場に入れないようですね。
3.なんで社会保険に入らないといけないの?
建設業界は、他の業界に比べてケガが多く、社会保障の必要な方も多くいます。
中でも、会社に所属しない一人親方は、社会保険に入っていない人が多くいました。
いざというときの保障が受けられない、というのが一因で、若い世代の建設業界離れも深刻になっていました。
それに危機感を感じた国が、前述の「下請指導ガイドライン」を制定したのです。
現場の入場制限を厳しくすることで労働環境を改善し、若い世代が働きやすい環境作りを推し進めています。
元請け企業に対しても、社会保険に未加入である建設企業を下請企業として選定しないよう要請しています。
令和6年4月1日以降は、建設業においても労働基準法の時間外労働の上限に関する規制が適用されます。
一人親方に限らず、建設業界全体が、安全に働ける業界を目指しているということです。
4.適切な保険加入ってなに?
一人親方が入らなければいけない社会保険は、「健康保険」「国民年金」「労災保険」の3種類です。
入場制限を受けないためには、これらに加入する必要があります。
では、それぞれにはどんな役割があるのでしょうか。
① 病院にかかるときに必要な「健康保険」
日常生活において病気になったりケガをしたら、病院に行きます。「健康保険」は、そんな病院の診察時に必要な保険です。
加入後は、健康保険証の提示で全国どこの病院でもかかれます。いつどんな病気になるかわからないからこそ、健康保険には必ず入っておきましょう。
一人親方は、国民健康保険もしくは建設国保(全国建設工事業国民健康保険組合)で健康保険に加入することができます。
会社に所属している人は会社側が用意しますが、一人親方は自分で手続きする必要があります。お住まいの地域の役所や建設国保の支部にて、手続きを済ませておきましょう。
② 仕事を引退した後の収入「国民年金」
年をとって仕事を引退すると、収入がなくなります。無収入になったとしても、生活するにはお金がかかります。そんな老後の生活のためにあるのが、「国民年金」。
保険料を納めることで、老後にお金を受け取ることができます。
これも健康保険と同じく、一人親方は自分で手続きする必要があります。
手続き先は、お住まいの地域の役所です。国民健康保険に加入される方は、国民年金と一緒に手続きを済ませておくとスムーズですね。
③仕事中にケガをしたら「労災保険」
建設業に従事していると、ケガは日常茶飯事です。労災保険は、仕事中や通勤中のそんなケガなどを補償してくれる保険です。
建設現場においての災害補償責任は元請けにあります。
しかし、一人親方は同じ作業をしていても、元請けが現場ごとにかけている「労災保険」を受けることはできません。
そのため、自分で労災保険に加入する必要があるのです。
本来、労災保険は労働者を守るための保険で、個人事業主は加入できません。
しかし、ケガが多い建設業界では、特別に一人親方や現場に出る会社の代表などでも労災保険に加入することができます。これが「特別加入」の制度です。
「特別加入」は、特別加入の加入団体を通じて加入手続きができます。
加入に関する金額や加入を証明する加入者証の発行スピードなどは、団体によって様々です。
現場が無くなると、一度労災保険を辞める方もいると思います。「あれ、労災保険入っていたっけ」と思ったら、まずは加入者証が手元にあるかどうか確認してみましょう。
まだ加入していなかったら、早めに加入団体を探して手続きする必要があります。ギリギリになって焦らないように、事前に準備しておくと現場入場の際も安心ですね。
5.建設現場入場制限のまとめ
現場での入場制限はますます厳しくなっていくことが予想されます。
それは、一人親方や建設業界全体が安全に働けるようにするためだったんですね。
「社会保険に加入しないといけない」と聞くと、なんだか見構えてしまいます。しかし、どれも一人親方の仕事や生活を守るための大事な保険です。
安全・安心に仕事をするためにも、現場入場の前にすべての保険の加入手続きを済ませておきましょう。これで「入場制限」とも、おさらばです。