4次下請は現場に入れない!3次下請も危うい!?どうすれば仕事ができる!?
このところ耳にする「重層下請け構造」の問題。一体下請は何次までOKなのでしょうか。
この記事では建設業の下請のしくみと、今後について詳しく見ていきます。
目次
1.4次下請と建設現場:建設業の構造
建設業界においては、民間企業・国・自治体といった発注者から、ゼネコンをはじめとした規模の大きな建設会社に仕事が発注されます。
このように発注者から直接依頼を受けた人や企業のことを「元請」と言います。
元請から仕事を受注する人や会社のことを「下請・1次請け」と言います。
建設業界では下請業者からさらに別の下請に仕事が発注されることも多く、1次請けから仕事を受注した人や企業は「2次請け」と呼ばれます。
規模が大きな工事では4次、5次請けまで請負が拡大することもあります。
工事の規模に合わせて請負業者が関係することで、大規模な工事を施工することが可能になります。
建設業界の構造は、このようにたくさんの層でできていることから「重層下請け構造」と呼ばれています。
①元請と下請のメリットとは
元請と下請にはそれぞれメリットがあります。
元請にとってのメリットは、自社のコストを大きく削減できることです。
建設業には繁忙期と閑散期がありますが、閑散期に合わせて正社員を雇用することで人件費などの固定費のコストを最低限にすることができます。
逆に繁忙期に人出不足になってしまうと、受注チャンスを逃してしまうことになりかねません。下請業者を利用することで、受注チャンスロスを防ぐことができます。
下請業者としても、営業や広告宣伝費用を抑えられるというメリットがあります。
発注者との交渉や手続きなどは元請が行ってくれるため、専門業務に集中できます。
元請からの信頼が厚くなれば、一定量の仕事が確保できるのもメリットです。
②「一括下請け」=「丸投げ」は禁止!
元請けは下請け業者に仕事を発注するにあたってはいくつかの注意点があります。
特に注意しなければならない点が、「一括下請け」つまり「丸投げ」は禁止されているということです。
下請け業者に受注した仕事を丸投げすることは、建設業法22条で禁止されています。
発注者は、元請け業者の信頼・技術力・実績などをもとに工事を発注しています。
受注した業者が一括下請けを行い、別の業者に工事を丸投げすることは、信頼して発注してくれた発注者を裏切ることになり、責任の所在も不明瞭となります。
また中間で利益を搾取してしまうことで、下請けの利益は薄くなり、働く環境の悪化にも繋がります。
一括下請けの禁止はすべての工事に適用されるため、元請け業者から一次下請けだけではなく、一次下請け業者から二次下請け業者、またそれ以下についても適用されます。
建設業法に基づく監督処分の対象となり、営業停止となる場合もありえるため、絶対に行わないようにしましょう。
2.4次下請と建設現場:建設業工事の下請は原則何次下請まで?
日本では昔からあったこの「重層下請け構造」ですが、たくさんの問題点があり改善が求められてきました。
日本建設業連合会は2009年「下請けは原則3次以内」という基本方針を出しています。
さらに、2014年には4年後の平成30年までに可能な範囲で2次以内を目指すという方針を出しました。
スーパーゼネコンの鹿島建設も2021年度から2023年の中期経営計画において、次のようにホームページに掲載しています。
「次世代の担い手確保に向けて、原則二次下請までに限定した施工体制の実現をはじめとした環境整備、技能労働者の処遇改善、育成・定着などの施策を推進する」
さらに3次下請け以下は支店長許可を必要とし、協力会社と一体となって早期に2次下請け以内の確立を目指すとあります。
かねてから問題視していた国土交通省も今年に入り「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」を立ち上げました。
重層下請け問題をついに重要課題として具体的に改善に踏み切った形になります。
これを受けて各自治体でも下請け制限に取り組んでいます。
すでに福井県、京都府をはじめ8つの自治体で進められており、建設業は原則3次下請けとし、制限除外申請や理由書等を出さないで工事していた実態がわかれば、指名停止などのペナルティを科すとしている自治体もあります。
3.4次下請と建設現場:4次下請はどうしてダメなの?
なぜこのように3次以下の下請けがダメだと言われるのでしょうか。
それには2つの理由があります。
①元請の管理が行き届かないから
元請は品質や安全管理において工事全体の責任を担っています。
ですが、下請が何層もあればあるほど、その管理が行き届かなくなってきます。
それぞれの下請けは同じ会社ではないわけですから、コンプライアンスやガバナンス、考え方の違いによる掛け違いで、現場の統制をとるのが難しくなります。
すると工事の質や安全管理に問題が起きてきます。
②建設業界を若い世代にとって魅力的にするため
下請が何層もあればあるほど、マージンをとられ、利益は薄くなっていきます。
実際に、資材調達などの商社などが下請けに入っている場合、請負工事に直接タッチしないのに間に入っているだけのケースがあります。
利益が薄くなれば経営体制も悪くなり、社会保険未加入などの問題もでてきます。
若手を育てたくても、賃金が安い、社保も入れないでは未来に希望が持てません。
職人の質の向上や人手不足解消のためにも、建設業をさらに魅力的な業界にしていかなければいけません。
4.4次下請と建設現場:4次下請を現場に入れるには?
ではこれまで4次下請として現場に入っていた人達は、どうすればいいのでしょうか。
ご安心ください!
冒頭のマンガのように、3次下請の従業員にするという方法があります。2次下請まで、と打ち出している鹿島建設も、3次下請は「1次下請と直接契約すること」を推進しています。
つまり、下請けという形ではなく、一つ上の会社と同じ層に並ぶということです。
これまで4次下請けで入っていた方々は従業員=労働者となり、3次下請け=雇用主となります。
その時に必要な手続きは次の2つです。
①労災保険の切り替え
雇用主は一人親方から中小事業主の特別加入に切り替えが必要です。
②雇用保険の手続き
従業員は、元請のかける現場労災が適用となります。
現場では、「従業員の労災をかけてきて」とよく言われているようです。
実際にかけなくてはならないのは労災保険ではなく雇用保険です。
雇用保険をかけると「雇用保険被保険者番号」が発行されます。
現場にはこの「雇用保険被保険者番号」を提出することになります。
しかし、雇用保険の手続きは何度もハローワークに足を運ばなければいけなかったり、用意する書類がたくさんあったりするなど大変です。
その場合はRJCにお任せください!
労災保険の切り替えも雇用保険も、面倒な手続きをすべて任せることができます。
5.4次下請と建設現場:まとめ
国や大手ゼネコンの重層下請け構造改善への取り組みにより、これまで4次下請として現場に入っていた方、3次下請として4次下請を伴って現場に入っていた方は注意が必要です。
いざ現場に入る時に困らないよう、労災保険の切り替えと雇用保険の手続きを確認しておきましょう。その時はぜひRJCにお任せください!
元厚生労働省 厚生労働事務官
厚生労働大臣承認 愛知労働局承認
一人親方労災保険RJC アドバイザー
林 満
はやし みつる